設計事務所に就職したいけど、どういう仕事? ふらっと建築雑談
みなさんこんにちは!
ふらっとです。
今回は設計事務所ってどんな仕事してんの?って学生の頃思っていたので、そういう疑問を持っている方だろうなぁと思ったので、シェアしていこうと思います!
また、一般の方もハウスメーカーと設計事務所の違いがわからない人や、勘違いしている人もいると思ったので、誤解を解くべくシェアします!
そもそも設計事務所とは?
設計という名前がついている通り、住宅からビルまで建築全般の設計をする会社のことです。
そんなことは分かりきっていると思います。
ひとえに設計と言っても建築が建つまでには、
- 意匠設計
- 構造設計
- 電気設備設計
- 機械設備設計
を行わないといけません。
意匠設計はいわゆる一般的に知られている建築家のようなものと考えていただいて構いません。
構造設計は、意匠設計をもとに構造的に成り立つのか計算をする設計です。
電気設備設計は、照明やコンセント、その他電気的なもの全般の設計になります。
機械設備設計は、トイレ・洗面などの給排水や換気扇・エアコンなどの空調設備を設計します。
一般の方は建築家がすべての設計をしていると勘違いしていると思います。
すべての設計を一つの会社で行うこともありますが、基本的に4つの設計は別々の会社なのです。
今回は私の務めている意匠設計を中心にお話します。
意匠設計とは大きく4つに分かれています。
- 基本設計
- 実施設計
- 各種申請
- 設計監理
この4つの仕事をこなす会社のことです。
基本設計だけや実施設計だけ、各種申請業務だけの会社も設計事務所と名乗っている場合も多くあります。
むしろその場合のほうが多いです。
設計監理は実施設計をやっていないとわからないことが多いので、別委託ということはあまりありません。
私が勤務している事務所は3つともやりますが、仕事量が半端ないです。。。
基本設計とは?
基本設計とは、平面図・立面図・断面図を固める作業です。
要は基本的なデザインや空間構成の骨組みを考える作業になります。
デザインを考えながら、法的に成り立つか確認しながら行います。
建築設計の一番おもしろい業務なのです!
デザイナーと呼ばれる人たちがこの辺の業務を行っています。
設計事務所だと、所長(事務所のトップ)が行うことが多いです。
良い設計事務所に入社できると、所長に提案してやり取りして、そのまま実施設計へ進むことができます。
良くない事務所は、提案すると怒られ、所長の基本設計が法的に成り立っているか確認する作業をして実施設計に進むということしかさせてもらえません。。。
この業務は施主が建築家にお任せであれば3週間くらいで終わります。
いろいろ要望があったり、変更が出ればそれだけ伸びます。
大学の設計課題は、基本的にここまでしか行いません。
卒業設計でさえ基本設計止まりなので、設計の一番おもしろい部分だけ学んで勘違いして挫折するパターンが多いです。
実施設計とは?
実施設計とは、基本設計で決まった平面図・立面図・断面図を詳細に設計していく作業です。
平詳細面図・矩計図(断面詳細図)・展開図・鋼製建具表・木製建具表etc...
という図面を描くことになります。
ここから、構造設計・電気設備設計・機械設備設計が入ってきます。
基本設計が終わると同時に各設計事務所に基本設計図面を一斉に配って実施設計が始まります。
実施設計は各設計事務所の連携が重要になります。
意匠設計では、経験値から柱梁の大きさをなんとなく決めているので、構造設計で柱梁の大きさが変わってくることが普通です。
思ったより柱が大きくて扉が納まらないとか、梁が天井から出てしまうなどの弊害が出てくるので、そこをどう納めていくのか構造設計事務所と打ち合わせていく必要があります。
電気・機械設備に関しては、配管を上下各階に配管するためのパイプスペースを計画する必要があるので、思いもよらない所にパイプスペースが出てきて、洗面台が入らないとか廊下にボコッと出てきてしまうことがあるので、注意していかなければいけません。
構造・電気・設備の設計によっては、基本設計で決まったプランを大幅に変更しなければならない場合が結構あります。
なので、図面を渡してすぐに問題がないか確認をして、大きく問題がなければ意匠の詳細設計に入ります。
意匠設計の詳細設計は、壁の仕上げはどうするのか?扉の収まりはどうするのか?細かいデザインはどうするのか?ということをミリ単位で設計していきます。
この詳細な設計を規模にもよりますが、1ヶ月~2ヶ月くらいで行います。
各種申請とは?
建築を建てるときには行政の許可が必要になります。
確認申請と呼ばれるものです。
実施設計では描かない図面を書いていきます。
図面の内容を文字でまとめた書類を用意して、確認検査機関へ持ち込みます。
ここが結構厄介なポイントです。
基本設計のときに事前審査として確認検査機関で内容の大まかなチェックをするのですが、詳細な図面になると、これは法的にアウトですよね?と言われることがあります。
その質疑に対して、広辞苑みたいな分厚い法令集から「この条文をこういうふうに解釈して設計しています。」と半ば強引に説明をして納得してもらうのです。
確認申請を提出すると同時に、建築基準法以外の法律も申請しなければならないので、各法律に合わせた図面内容に変えながら申請していきます。
一つの図面で審査してよ。。。と言いたくなります。
申請開始から許可が出るまでにおおよそ4週間ほどかかります。
早ければ2週間の場合もあります。
各種申請はただただ事務作業なので、設計している感は全くありません。
法律との戦いなので、あれ?弁護士だっけ?ってなることがたまにあります(笑)
設計監理とは?
基本設計→実施設計→各種申請を終えると施工業者に見積もりを依頼します。
(施工業者とは、実際に工事をしてくれる業者のことです。)
実際には実施設計が終わった段階で3~4社に見積もり依頼をし、各種申請中に法に適合しない箇所の変更を途中で見積もりに反映してもらい、最終の見積もりを出してもらいます。
基本設計の段階で概算見積もりを出すのですが、詳細に設計していくと、概算よりも高くなることが殆どなので、VE(バリュー・エンジニアリング)やCD(コストダウン)を行って、金額を調整していきます。
そうして、会社の信頼性や金額を総合的に評価して施工業者決定します。
ここから完成するまで、設計図と現場の整合性の確認、図面上では納まっているが現場で納まらないなどの問題解決、施主の要望により変更を事務的に処理するなどを行います。
住宅だと半年くらい、マンションになると1年~1年半くらいの業務になります。
完成すると、完成しましたという完了検査という検査を確認検査機関に受けなければ建物を使うことができません。
ここで、確認申請と現場が違えば作り変えになります。
最悪の場合建て直しということにもなりかねません。
なので、そうならないように設計事務所が最新の注意を払って図面と現場を監理することが重要になります。
トータル業務期間と設計料
住宅レベルだと基本設計3週間+実施設計1ヶ月+各種申請3週間+設計監理半年
合計8ヶ月ちょっととなります。
マンションレベルになると、基本設計1ヶ月半+実施設計1ヶ月半+各種申請1ヶ月+設計監理1年
合計1年4ヶ月くらいとなります。
もちろん規模と内容によってはもっと早かったり遅かったりしますが、おおよそこのくらいになります。
そして、設計料は事務所にもよりますが、最近基準が作られました。
いろいろな計算式があるので、時と場合によりますが、大体工事金額×4~7%となります。
これは土地代は含まれていない上モノだけの金額です。
- 住宅で工事費3千万円 設計料4%と仮定すると、120万円となります。
設計するだけで120万円って高いような気がしますよね?
しかし、業務期間を考えてください。
完成まで8ヶ月かかるということは単純に÷8なのです。
月15万円の利益から諸経費を引かないといけないので、決して高額ではないのです。。。
いわゆる設計をしない設計事務所もある
じゃあ、設計事務所ではないのでは?と思われるかもしれません。
どういう業務内容かというと、外壁改修設計や公園遊具調査、ブロック塀調査などです。
外壁改修設計
設計といえば設計なのですが、主に公的建物(学校や公団地、市民センターなど)の老朽度合いを確認して補修するという設計です。
地方の設計事務所はこの業務を主な収入源としている事務所が非常に多いです。
新築設計は年に1度あるかないかで、その他はずっと外壁改修設計をしている事務所に入ってしまうと設計事務所が嫌になってしまいます。
作業としては学校に行って、ヒビが入っていたり、塗装が剥げていたりした箇所を立面図や平面図に細かく記入していきます。
ヒビが何mm入っているのか?塗り替えは何㎡あるのかというのをすべて、表にして数値化します。
そこに補修単価をかけて金額を出すという、ほとんど事務作業なので、設計を夢見てこういうことしかしていない事務所に入ると後悔してしまいます。
この業務は作業量が多い割に金額が低いので、数をこなさないと利益が出ないので、給料が低いことが多いです。
公園遊具調査
建築関係なくない?と思われるかもしれませんが、この調査業務を行うには建築士の資格が必要なので、設計事務所が行っていることがほとんどなのです。
公園という公園全てを調査しなければいけないので、非常に時間がかかります。
公園に実際に行き、錆びついてないかとか、ネジが外れていないか、欠けたりしていないか目視でチェックして写真として記録に取ります。
その写真をまとめて、老朽具合を何段階かで評価して役所へ提出します。
ブロック塀調査
ブロック塀は最近通学路で倒壊してお亡くなりになられたりしているので、この調査の需要は増えています。
ブロック塀は建築基準法の範囲内なので、法律に適合しているかどうかを確認していく作業になります。
ブロック塀は高さの制限だったり、控壁があるのかなど目視で分かる範囲だったり、内部にどのくらいの径の鉄筋が入っているのかといった見えない部分の調査が必要になります。
なぜ、違法なブロック塀があるのか?ということなのですが、建築基準法は建物や塀が建った当時の法律に適合していればいいので、ブロック塀の法律ができる前は無法地帯だったのです。
設計事務所の分類
ここまで設計事務所の主な業務内容をご紹介しました。
これらの業務内容にそれぞれ特化した設計事務所があるので簡単に分類してみます。
- 組織設計事務所
- 意匠設計事務所
- 構造設計事務所
- 雑務設計事務所
大きく分類するとこのようになります。
電気・機械設備設計事務所はないの?と思われるかもしれませんが、もちろんあります。
しかし、実務の中では基本的に電気施工の業者、機械設備施工の業者の設計部に設計協力をしていただいて、実際の工事にも入っていただくことがほとんどです。
組織設計事務所
組織設計事務所は意匠・構造・電気・設備の基本設計・実施設計・各種申請・設計監理全てを一つの会社で行う設計事務所だと思ってください。
全ての事を行うので、ものすごい人数がいます。
設計事務所の中では大手という分類になります。
組織設計事務所に入るには大学院卒が条件だと聞きます。
なので、高学歴のエリート集団という印象です。
意匠設計事務所
意匠設計事務所は意匠の基本設計・実施設計・各種申請、意匠・構造・電気・設備の設計監理を行う設計事務所です。
いわゆる設計事務所だと思ってください。
有名建築家たちはこの設計事務所に分類されます。
意匠設計事務所の中でも、合理的な設計をする事務所と、デザイン重視の設計をする事務所があります。
後者はアトリエ事務所と呼ばれます。
設計事務所とアトリエ事務所の違いって何?と学生は思うでしょうが、デザイン重視か合理的設計かの違いなので、明確に分かれているわけではありません。
ほとんど同じだと思っていいです。
また、申請図面があれば、監理はできるので、意匠・構造・電気・設備の設計監理まで行います。
構造設計事務所
構造設計事務所は構造の基本設計・実施設計・各種申請を行う設計事務所です。
住宅規模だと意匠設計事務所が行ってしまうことが多いですが、マンション規模になると、かなり専門的に計算しないと行けないのです。
内容によっては、何百枚の計算書になってしまいます。
雑務設計事務所
地方には非常に多い設計事務所です。
先程の外壁改修設計や公園遊具調査、ブロック塀調査を中心に業務としている設計事務所です。
もしくは、確認申請代行設計事務所のように他の事務所が設計した図面を法的に処理する設計事務所もあります。
また、最近省エネ法が厳しくなり、作業量が多いので、省エネ申請代行設計事務所なども出てきております。
こういう設計事務所に当たってしまうと、夢見た建築家像が崩れてしまいます。
設計というより、事務作業ばかりなので、大変で賃金が低いという悪循環に陥ります。
ハウスメーカーと設計事務所の違い
一般の方が家を建てたい!と思ったときまず、住宅展示場に行くと思います。
ハウスメーカーの利点はその住宅展示場でこういう家が良いとなれば、そのまま建てられるということです。
設計事務所は、住宅展示場など持っていないため、竣工写真でしか判断できないので、こういう家がいいとなりにくいです。
ハウスメーカーは営業・設計・施工という3つに分かれています。
施主(お客さん)とやり取りするのは営業のしごとになります。
そのやり取りを設計に伝えて設計を行い、施工に移ります。
つまり、設計は図面を描くだけということです。
ここが設計事務所との大きな差だと思います。
設計事務所にとって設計とは図面を描くということではなく、提案することが設計だと思います。
図面はその提案を正確に伝えるためのツールでしかありません。
なので、設計事務所は施主との打ち合わせの際には図面よりイメージ写真や素材のサンプル、パースや模型など視覚的にわかりやすいものをメインに打ち合わせを行います。
そして、基本的にこの施主はこういうデザインが好みだろうということで提案をしていくスタイルなので、施主は受動的に打ち合わせが進みます。
ハウスメーカーの場合は、簡単に言えば規格品なので変更したりデザインを大幅に変更することは基本的にできません。
規格品の中から施主が主体的に決めていくスタイルになります。
どちらも一長一短なのですが、設計事務所の場合は工事費を自由に設定することができます。
極端に言えば同じ土地でも100万円でも1億円でも建てられるのです。
100万円になれば安価な素材で、規模は小さくなりますが、不可能ではありません。
ハウスメーカーは規格品なので、ランクによって金額がほぼ決まってきます。
なので、設計事務所にお願いするほうが安くなることも大いに有り得るのです。
まとめ
いかがでしたか?
設計事務所がどんな仕事をしているのかが、なんとなくわかってもらえたでしょうか?
設計事務所と言ってもいろいろなタイプがあるので、オープンデスクなどを利用してよく調べるようにしましょう。
そして、家を建てる選択肢に設計事務所を入れたほうが良いことを理解していただければ幸いです。
思ったことをダラダラ書いていたら長くなってしまいましたwww
最後までご覧いただきありがとうございました!
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